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イスラーム地域研究の概要

イスラーム地域研究組織図

拠点形成の目的

21世紀に入ると、ニューヨークとワシントンでの同時多発テロ(2001年9月)をかわきりに、米英軍の空爆によるターリバーン政権の崩壊(同年12月)や同じ米英軍の侵攻によるフセイン政権の崩壊(2003年4月)など、世界を揺るがす重大事件が相次いで発生した。これらの事件や戦争の背後には、「イスラームのグローバル化と先鋭化」という事実が存在する。21世紀における世界の動向、石油資源の問題、地域紛争の性格などを正しく理解するためには、この新しい現実をふまえたうえで、イスラームと各地域社会との関係を多様なディシプリン研究を活用して具体的に明らかにすることが不可欠である。新研究計画の実行によって、創成的基礎研究「イスラーム地域研究」プロジェクト(1997-2002年)を継承し、これをさらに発展させることによって、日本におけるイスラーム研究・教育の拠点形成をめざす。具体的には、以下の3点を主要な課題として設定する。

  1. 現地の研究者を含む国際的な共同研究を実施し、「他者」と「当事者」双方の目を通して「イスラームと地域」の係わりを分析することにより、現代イスラーム世界について実証的な知の体系を築くと同時に、その理解の深化をはかる。また、この研究を積み重ねることによって、イスラーム地域研究に固有な研究手法を開発する。
  2. 各研究拠点における研究の基盤となる文献資料を収集、整備し、創成的基礎研究「イスラーム地域研究」で開発されたアラビア文字による情報検索システムを整備して、蓄積された史資料のデータベース化、情報の公開、史資料利用の全国化・国際化をさらに促進する。同時に、書誌学的研究を進めることにより、イスラーム史資料学の開拓をめざす。
  3. 各研究拠点の活動が、イスラーム地域研究に関する大学院教育の充実につながるよう配慮するとともに、国内・国外の若手研究者が本イスラーム地域研究へ参加することを積極的に奨励し、国際的な活動を通じて次世代のイスラーム研究を担う若手研究者を養成する。

研究対象

現代のイスラームは、地域を越える共通の問題と同時に、地域の歴史や文化と結びつく地域の個性に関わる問題を抱えている。イスラーム地域研究では、この双方の問題に取り組み、イスラームの知と文明、イスラームの宗教・思想と政治運動、イスラームの社会と文化、イスラーム関係史資料の収集と書誌的研究、イスラーム世界の国際組織などの側面から総合的に研究する。対象となる地域は、中東、北アフリカ、中央アジア、南・東南アジアばかりでなく、必要に応じてアフリカ、ヨーロッパ、中国、さらにはアメリカや日本にも及ぶことになろう。

研究方法

対象となる地域の規模は、中東や中央アジアなど従来の地域概念に縛られることなく、課題に応じて中小の地域を設定し、地域を越える共通の問題と同時に、イスラームと地域の個性との関わり方を追究する。イスラーム地域研究は、宗教学、政治学、経済学、歴史学、社会学、文化人類学などのディシプリン研究を基礎とし、それらの研究成果を総合することをめざす。この総合を実現するために、(1)いくつかの地域をとりあげ、それらを比較する地域間比較の手法と、(2)現代の問題ではあっても、歴史をさかのぼって解明する歴史的アプローチの手法とを採用する。このような研究手法を活用することによって、国際的な共同研究を実施し、現代イスラーム世界に関する実証的な知の体系を築くことがねらいである。

研究組織

イスラーム地域研究は、早稲田大学イスラーム地域研究所を中心拠点とし、東京大学大学院人文社会系研究科、上智大学アジア文化研究所、財団法人東洋文庫、京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科に置かれる4拠点を結ぶネットワーク型の研究組織をつくり、人間文化研究機構との共同研究として実施される。各拠点の研究領域・テーマは以下の通りである。

中心拠点:早稲田大学イスラーム地域研究所・現代イスラーム地域研究センター
「イスラームの知と文明」総括責任者:佐藤次高
拠点1:東京大学大学院人文社会系研究科附属次世代人文学開発センター・イスラーム地域研究部門
「イスラームの思想と政治:比較と連関」総括責任者:小松久男
拠点2:上智大学アジア文化研究所・イスラーム地域研究拠点
「イスラームの社会と文化」総括責任者:私市正年
拠点3:財団法人東洋文庫研究部・イスラーム地域研究資料室
「イスラーム地域研究史資料の収集・利用の促進とイスラーム史資料学の開拓」総括責任者:三浦徹
拠点4:京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科附属イスラーム地域研究センター
「イスラーム世界における国際組織」統括責任者:小杉泰

研究成果の公開

イスラーム地域研究プロジェクトの5年間にわたる研究活動の結果として、以下のような全体的成果のとりまとめをめざす。

1. 新イスラーム地域研究叢書の刊行

既刊行の「イスラーム地域研究叢書」(東京大学出版会)を踏まえたうえで、各拠点の新しい研究成果をまとめるための新叢書を刊行する。これには現地研究者など外国人研究者の翻訳論文も含めて掲載する。各拠点で1冊ずつ計5冊の刊行をめざす。

2. New Horizons in Islamic StudiesNew Islamic Area Studiesの刊行

新和文叢書とほぼ同内容の英文叢書を刊行する。現地研究者など外国人研究者との討論を踏まえたうえで、少なくとも各拠点で1冊ずつ計5冊の刊行をめざす。

3. 和文・英文のWebsite上での研究成果の蓄積

和文・英文のホームページを活用して、各拠点での研究成果を中心に情報を蓄積し、国内外に発信する。事実上、ニューズ・レターと同じ働きをする。

4. 国内・国外を含む研究者ネットワークの拡大

「イスラーム地域研究」で形成した研究者ネットワークをさらに拡大し、その充実をはかる。

5. 「イスラーム─知の探求」シリーズの刊行

各拠点での研究成果を大学生および一般向けに分かりやすく解説したシリーズ本を刊行する。